めげない

 家呑みしたら記事を書くルールの徒然日記。

ほあた☆

WILL

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いや〜ひっさしぶりに小説を読んだ!本多孝好を読みあっていた友達からおすすめされた1冊でMOMENTの続編、ていうかアナザーサイドというか。しかしこの作者さんの描く女性主人公のサバサバっぷり、かっこよさがやっぱりずるくても嫌いにはなれない。MOMENTでほんのちょっとだけ出てきたあの人が中心となった短編3つ、だっけ?長編も好きだけどこういうシリーズとして短編まとまった感じが私は好きかも。MOMENTもそうだったけど。これで神田の顔がそこそこのイケメンじゃなかったら私は泣くぞ(笑)








主人公がひたすら考えているのが葬儀屋としてのあり方、自分が信じる葬儀屋としての自分、というのがかっこいい。フィクションならではの偽善的行為もこの主人公がその身ひとつ、その考えひとつで頑張ってやっているんだということを想像するとスカッと出来る内容。いやーサバサバすばらしい!こういう女性はそれでも結局、ちゃんと気になるの人がいるし、結ばれるんだなーというのを読み終えると、自分と置き換えてちょっとヘコんだりもしますが私は元気です、マル。


この主人公が一番最初の物語で高校時代の同級生が尋ねてくる、その時の同級生の嫉妬、というか「どうしても好きになれなかった」という部分がすごくよくわかる流れだった。人の不幸自慢ってどうしようもなくて、誰しもがそれぞれの色々を抱えている、それでもそれって表面では見えないんだよな。だからこそ人は人のことを嫉妬してしまうし、見下してしまうし、そうされたと勘違いだってしてしまう。


主人公がここまで葬儀屋としての使命を果たさなければ気がすまないのはきっとご両親の死、ご両親の教えというか触れ合う中で受け取ってきた葬儀屋としてのあり方があるからだろうけれど、急に会えなくなってしまった、急にこの世を去ってしまった大切な人の死を前に、当時高校卒業目前だった主人公がふっと糸を切らしてしまったときの心情が、とても簡単な言葉たちで語られているのに、リアルすぎてどうしようもなかった。



「ああ、大丈夫?」
神田がおろおろとティッシュを一枚差し出した。
「駄目。もう駄目」
神田の手を押しのけて、私はうずくまった。駄目なのかどうかはわからなかった。ただ、もう駄目ということにしておいて欲しかった。いつか私はここから立ち直れるのかもしれない。けれど、それはいつかであって、今ではない。
絶対に今ではない。


どうしようもないことも、本当はどうにかなっていくんだということも分かっている、その中で思う「もう駄目」ってのは、へとへとになるぐらいのものなんだろうな。私も最近すげぇこれと近い心境になりましたけれど(苦笑)立ち直れるって分かってるし慣れればいいって分かってるけど、今現時点ではもう駄目、もう無理、っていうときって涙がわけわかんないぐらい出るんだよな・・・


神田が実は主人公がその身一つで着てくれる為に渡米してうんたらかんたら、とかは微妙にそれってどうか?とは思ったけれど、主人公の傍で見守っている竹井、新人社員の桑田、寺の和尚、商店街の人々などが皆ちゃんと記憶に残るいい人柄ぐあいで面白かった〜。大切な人との突然の死。両親の残してくれたやり方を守りながら続けてきた葬儀屋の仕事を経て、もう一度葬儀をする主人公。この方の小説って主人公も物語の執着地点もうっすらキザですよね(笑)でもわたしそれが嫌いじゃない。あと私にとってすらすら読める、面白いお話でした。


久しぶりにMOMENT読み直したいなーと思ったら私の本棚にはなかったや、買った気がするんだけど・・・と思ったらこれだった。

FINE DAYS (祥伝社文庫)

FINE DAYS (祥伝社文庫)

ちょっと図書館にあればまた読み返したいです、MOMENTも。