めげない

 家呑みしたら記事を書くルールの徒然日記。

本を読む理由。

なんだか久しぶりに「おお・・・」というじっくりと効いてくるボディブローをくらったような本でした。ということで以下の感想はちょっとテンション低め(笑)

密やかな結晶 (講談社文庫)

密やかな結晶 (講談社文庫)



私が好んで読む本は「最後はハッピーエンド」というか、悲しみのどん底では終わらない、どうしようもない形では終わらないものばかりだったので、久しぶりにどうしようもないまま終わる、静かで繊細ででも芯がとてもしっかりしていてやるせない物語だな、と思いました。

この方のお話の前にもう1冊、作家さんも題名も全然きいた事ない本をちょっと手にとって見てそのまま借りて読み進めていたんですが、それは「とある小さな町に住む父親と息子と野球」のお話だったんですけれど、それが全然読み進められなかったんですね。それは、登場人物が動いていくスピードと、その登場人物に対する興味が合わなかったというか。名前がたくさん出てきても「あぁ、あの人ね」となんとなくは思い出せるスピードではなく、「・・・、ん?これは息子の名前?それとも親父さん?」って2、3ページ戻して確認しちゃわないと分からないような感じだったので、早々に諦めてしまったわけです。

しかし、この物語は、「生物や物体、それらが1つずつ心の中から消失していく、そのものに関連する思い出や呼び起こされていた感動や気持ち、感じていた心の動きそのものも消失していきやがて思い出せなくなってくる」「その消失は島にいる全員に訪れるが、まれに消失が訪れずずっと全ての事を思い出にできる、忘れずにいられる人がいる」「秘密警察はその消失による島の統制を完璧にするために消失が訪れない人を探しては捕まえていく」という突拍子もないお話なのに、最後の最後まで隙がまったくない。人物も、環境も、島の生活も、味わった事のない消失の感覚の端っこすら捕まえられそうな錯覚に陥る、この方の文章の力、文章の素晴らしい創造性ってなんでしょうな、とびっくりするぐらいです。

しかーし!最後には、最後には本当にやるせないことになってしまい、しかしその悲しいはずの現実でさえも、消失というものを受け入れて、何か疲れ果てた、ぼんやりした感覚で受け止めているその感じが、余計やるせないというか・・・だー!本当に、言葉が悪いけれど救われなかった物語なんです。最後には何かあるでしょう、って思っていたのにないんだもの。

はぁ、なんだか私は重たくなっちゃったんだけど、やっぱりすごいお話だなっておもいました。読んでいて面白いもんな、すらすらとたくさんの文字を追っていく感覚、その後にある読後感、それによるちょっとした疲労感がいいな、読書っていいなー。図書館に住みたい。