めげない

 家呑みしたら記事を書くルールの徒然日記。

大人になっての初めて。


ムーミン展の感想です。ほんとすばらしかった。1人でも飛行機乗ってでも行ってよかった心底。




広島県立美術館は、とても綺麗で静かな素敵な場所でした。そもそも美術館自体が初体験の私なんですが、9時30分に到着したときにはまだ人もまばらであり、優しくて美人なお姉さまからチケットを購入する。

展示ルームは3F。入ってすぐの中央に位置したエスカレーターにも、エレベーターにも黄色いポスターで「ムーミン展3F」の案内がある。この黄色いポスターそのものも私は初めて見たのですが、広島に来てからテレビや町で見かけたなぁという印象。シンプルで素敵。

全面ガラス張りのすがすがしい景色を見ながら、エスカレーターで3Fの会場へ。
入り口では、子供さんが座れるようなかわいらしいイスが並び、写真撮影ができるようなキャラクターセットが組まれていました。
中に入り、一番最初に飛び込んでくるのは大きなムーミントロールの立体像。自分の名が書かれた台座の上に立ち、まっすぐを見つめているムーミン。色合いが不思議で、なんだかキラキラしているように見えるのに、素朴感がある。足元は綺麗な貝殻で飾り付けられている。

そこから明るすぎずかといって暗すぎもしない空間に、シンプルに配置されたトーベ・ヤンソンさんの作品の数々。最初にタンペレ博物館の方からのメッセージがあり、ヤンソンの自画像や油絵などが続く。

ヤンソンさんは自画像がとってもお上手だなーとバカみたいに思ってしまうぐらい、お若いころと年齢を重ねたころのご自身のつかみ方がすばらしかった。雑誌などでは見たことあるけれども、実際に見つめるとまた違う。写真とともに展示されたそれと、1枚(私は)初めて見た油絵が1点。これは美術の時間に習ったような、足つきテーブルの上に布が引かれ、その上に果物や大きな貝殻などが「絵を描く材料として」置かれたような作品。


次は主にGURM挿絵やその当時に描かれたムーミンシリーズとは異なるインク画。ここからもうびっくりする。驚きばかり。何がすごいって、実際に見たことのある方のブログを見てそうなのか、と思ってはいたけれど、作品の細かさといったら。何事かと思った。GURMは当時、印刷事情で紙の質がわるく裏面の記事が透けて見えていた、というのも読んだけれど、トーベ・ヤンソンさんの下書きが消えずに残っているのね。鉛筆のようなもので描かれた線が残っていて、そこから微妙にずれて描かれた本線もあれば、重なった線もあるのだろう、さらにインクで清書されたそこに水彩で色がつけられているんだけれど、その色の重なり方、線と線の区切り方、空白と色との境目がとっても繊細で素敵だった。実際GURMの表紙(色つき)は、記憶には3点ほどだったのではないかと思うけれど、それにしてもぐっと近づいて細かく見入ってしまう。大きさもA4程度?本当にそのままの大きさなのだろうそのものが、きちんとシンプルな額にはいって並んでいらっしゃる。すごくよかったな〜。

「どこかにムーミンがいるから探してね!」と案内があったんですが、このムーミン探しはすこぶる楽しかったです。どこかにこそりと、トーベさんのサインとともにある場合も多かったですが、何より本当に絵の大きさ、細かさにびっくりするんです。何度も何度も自分の人差し指を絵のそばぎりぎりまで持っていって、「これは爪に描ける大きさだ!」と繰り返し確認してしまった。そのぐらい小さいムーミン

そして次第に、それぞれのムーミンシリーズの挿絵、ほか表紙や習作の展示。ここも本当にすごかった、どんなにどんなに近づいても線の表情がすばらしいのです。直線、丸みを帯びているもの、途切れがちなもの、塗りつぶされているもの、かすれているもの、ありとあらゆる表情を細かく細かく使っていきながら形づくられたその1つの作品は、もうじっと見つめて息をするのを忘れるぐらい。ひとつひとつじっくり見て回るもんだから、目が乾く乾く(笑)

表紙の絵には色もついていましたが、本当にすばらしい色使いだった。山の重なり合い、竹馬、桟橋のガラス、海。中でも「ムーミン谷の11月」の表紙であったフィリヨンカが大きく描かれた表紙は素敵でした。フィリヨンカの足元に積もった、やわからそうに重なり合った落ち葉の色合いが衝撃的、あんな色だったんだ・・・!と驚き(日本版ではそこがないもんね)綺麗だった〜。あとトーベさん自身が表紙の上部・下部とを区切ってあり、ご自身の名前や作品タイトルが挿入されるであろう部分も残っていたんですが、そこにニョロニョロがいたり、パパがいたりでもう大変。しかもなんか切り貼りしているし。

他、立体物、コミックスの下書き(コンテのようなもの)、中では座って見れるDVDを流しているスペースや絵本が見れるスペースもありました。で、この作品たち、かなり曲者なので、休憩を挟める展示スペースがないとしんどいかもしれません。

というのも、前記したことと繰り返しになりますが、トーベ・ヤンソンさんの作品はとても小さいです。A4程度のものから小さなものは名刺よりも小さな白い紙に細かなインク線で作品を描かれています。何がすごいって、その細くて小さくてこまかい線にきちんと表情があり、絶妙なラインや素敵なかすれ具合がふんだんにありすぎる。とんでもないですよ。3mmのつま先は踊るようにはねているし、1cmあるかないかの丸みを帯びたものがちゃんとハットをかぶったパパだってわかる。白と黒で、はがきサイズよりも小さな紙に、夜に浮かぶ月、強い風になびく服、暗闇の中で光り輝くガーネットを表現していらっしゃる。そしてその一つ一つが補修されていたり、下書きの線がそのまんまだったり、切り貼りしてつなぎ合わせてたりするのです。ホワイトのようなもので修正した跡、下書きの線を見たときは感動した。それをじっとじっと見つめていると相当疲れます。広島県立美術館での展示はひとつひとつの作品の間は広く取っているわけではなかったですが、きちんと1つ1つ、目線の高さに展示されており、みんな覗き込みやすい位置でした。あと休憩スペースが覚えている限りでは2つはありました。その休憩スペースに入る入り口の部分にはトーベさんの写真や今までの活動などの年表があったりでほどよい区切りになっているし、休憩室も隙なく綺麗だし、なによりガラス張りの向こう側には縮景園のすんばらしい景色がひろがっていたので、自分的にはかなり助かった。私は一度でた後でやっぱりと思って2回入場したんだけど、さすがに頭痛くなってきたなぁ。

一番最初は9時開園だったのでとりあえず9時半ごろに入場、そこから2時間ぐらいかけてみたんですが、そのときはやはりさほど込んではいなくて、自分のペースで見たい時に後ろがつまりすぎたりすることもなく、雰囲気で察してちょっとどいておいて、つっかえていた人に先に行ってもらって、ってことができたと思います(私は相当ゆっくり見すぎたのか、先に行ってもらうのが人が少ない時間でも3回はあった)ですが2回目に入場したのはもう13時ごろだったので、そのときにはほとんど最初から列がつくれてしまっていて、ゆっくり見て回りたい人はいいんですがかなりつまっていたような感じでした。ひとつひとつゆっくり見つめて、一歩、といったスピードで全体が動いていたので、さらりと見たい人は逆に疲れちゃうかも、と思ったり。

中は冒頭で書いたように、暗すぎることはなかったのではと思いますが、あたりまえですが室内であることと「作品の保持のために照明を暗めにしています」といった案内書きもあったので、密室が苦手な人は休憩&水分補給などは超必須かと。展示ルーム全体がシンプルなつくりではありましたが、壁はそれぞれの区切り(童話集1巻ごとに挿絵や立体展示がまとまっていた)をつけるためか、ピンク・水色・白・黄色などの薄めパステルカラーで壁全体をまとめてありました。これは作品展ごとに変わりますか?(誰に聞いている)トーベさんの絵の大きさはとても小さいものばかりであったのもあり、額も大きさに統一感があってシンプルさがより際立っていました。

一番最後には販売ものも。ムーミン展限定の品もあり、なにより書籍がとっても豊富。しかし童話集はすべての巻が売り切れ。私は以下をお買い上げ。

ムーミン展限定マグカップ(シルバー/ゴールド両方)
・アートタイル(大)
・A4サイズ額装(ママの習作)
ムーミン展記念冊子
芸術新潮(これ買い逃してたの!!!うれしすぎる)
・トートバック無地(大) ←その場で洗っても大丈夫な好きな絵柄のハンコ押せる


というわけでこれだけで1万越えしたっていう・・・ま、まぁ仕方ないよ。


あと気になったんだけど、というかこれは童話集の挿絵見ていても超思っていたんだけど、「ムーミン谷の冬」の一部の挿絵ってインク画じゃなくって版画じゃないけど黒から白を浮き出す作法の作品で、かなり間近で見てるとすごくその「平面から掘り下げた部分がある凸凹」が分かって素敵だった。それになきそうなぐらいに細かく線がしきつめられていて、めまいがしたよ。


というわけで本当の意味での一人旅だったんですが、色んなところで迷ったりバス停にたどり着けなかったり逆方向の電車にのったり時間計算間違えて2時間前に空港に着いたり、と色々ありましたらが、行ってよかったですほんと。ほんとすてきだったよー。しかし1人でご飯を食べるのだけは初挑戦ながらもうしばらくは、というか必要に迫られない限りはいいかな、と思いましたマジで。人生初の広島風お好み焼きは最強においしかったです、というかそれしか食べてない実際。また食べたいなぁ。